大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(オ)34号 判決

上告人等は、石川県江沼郡山代町議会議員として本訴を提起し、同町長に対し同町議会の召集を命ずる趣旨の判決を求めるのであるが、普通地方公共団体の機関相互間の争いについては、法律に特別の規定のない限り法律の争訟として裁判所に訴訟の提起はゆるされないものと解するを相当とする。そして本件のような事項については地方自治法その他の法律に訴の提起をゆるした規定はないから本訴は不適法の訴というべく、この点に関する原判決の判示は正当である。論旨は上告代理人独自の見解であつて採用することができない。

右のとおりであるから、その他の論旨について判断するまでもなく、本件上告はこれを棄却すべきものとし、民訴四〇一条、九五条、八九条により裁判官全員一致の意見をもつて主文のとおり判決する。

(裁判官 斎藤悠輔 真野毅 岩松三郎)

弁護人村井清造の上告理由

第一点

本件は被上告人が昭和二十二年四月一日から現在まで上告人等が地方自治法第一〇一条に基き被上告人に対し議会を招集せられ度き旨度々請求するも、被上告人に於て同法律の規定に反し招集を行わないから、以て之が招集方を裁判所に於て判決を下されたいと云うにありて被上告人に於て右事実を黙認して争はないことは、その答弁書に照しても明白である。

原判決は

「本件は町の執行機関である町長と議決機関である町議会の議員である議員との間に町長の議会招集権の行使について生じた争でいわゆる機関争議に外ならない」とし「およそ行政機関相互の間に於てその主管権限の行使等について争が生じた場合には、それは行政機構内部に於ける争であるから原則として行政権自らの機能によつて之を解決すべく特別の定ない限り、所謂法律上の争訟として裁判所に出訴し得ないものと解するを相当とする。しかのみならず、我国に於ては一般的な制度として所謂職務執行命令が認められていないので、特別の定めなき限り裁判所が行政機関である町長に対し、議会の招集を為せと命ずる権限はないと云わねばならない。本件の場合には被控訴人が議会の招集をしないのはその職務の懈怠になるとしてもこれが対策として町長に対する不信任決議等の処置に出ずるのは格別地方自治法第百七十六条、第百四十六条の如き特別の定めを以て出訴権が認められていないのであるから、本訴は不適法として却下するの外なく、理由に於て異るところはあるが原審がこれと同旨の結論を為したのは相当であるから本件控訴を棄却することとし」と判示し控訴を棄却し第一審裁判所は、「行政庁たる被告の不作為に対し行政的一般監督権を有しない裁判所が行政行為の一つである右招集を命じ或いは代つて自らこれを為すようなことは司法権の限界を破るものである」とし、請求を棄却したのである。

然れども地方自治法第一〇一条議会の議員総数の四分ノ一の者が議会の招集を「長」に対して請求するのは、その議員に与えられた権利にして法律の保護救済が与えられねばならぬことは他の法律上の権利と同じであると云わなければならない。この点に関し何等他の権利と差別すべき法的根拠がない。而かも長が該請求に対し履行の義務あることは右法第一〇一条に「これを招集しければならない」と明規してあることによつて明白であつて該法文は日本政治の根本たる民主々義を実行するため不可欠最高の法則であると云わなければならないことは当然である。

法律に於て凡ての権利義務につき裁判所に出訴出来ることを規定した条文もあれば、又一々規定していないが解釈上出訴出来ると解すべきものも亦存する。今強いて法文にその根拠を求めれば行政事件訴訟特例法(昭和二三年七月一日法律第八一号)の第一条に行政庁の違法な処分の取消変更のみならず公法上の権利関係に関する訴訟についても訴訟を為し得ることを規定し居り又、日本国憲法第三十二条日本国民は裁判所の裁判を受ける権利を奪われない。ポツダム宣言第十項に民主々義的傾向の復活強化に対する一切の障害を除去すべしとあり、議会招集の義務ある「長」が招集義務を履行しないときは、その強制履行を求める裁判を起すことについては却つてこれを禁止する特別の条文なく、それがない限り招集請求権利者たる議員に於て出訴出来る事は当然であると云うべく、何等法的根拠なき事柄ではない。

もし地方自治法第百一条が単に所謂訓示的規定にしてこれを実行してもしなくてもよい事柄であるとすれば、換言すれば請求を受けた「長」に於て行つても行わなくともよい自由に委ねられている事柄であるとすれば、右各法文やポツダム宣言は空文死語か画餠にすぎないこととなるのであろう」

而して前記議会招集請求は議会としての法律行為ではなく、該請求権は議員たる者のみが固有する権利にして議員は所謂行政機関でない。本件は山代町の議会と長の争議ではなく、原判示の機関争議又は主管権限ではないから原判示は当らない。又さような学問的表示によつて解決する事が出来ない問題である行政庁の長たる被上告人が上告人等の請求がありたるに対し、当然なすべき議会招集を為さざるを以て上告人等が裁判所に訴えることは当然である。行政機関が自ら行うべき事柄を故意に行わない場合に裁判に訴え、裁判所がその履行を命ずることは何等干渉でも干犯でもない。行政庁が法律に従つて行政行為を行うに対し外部から容啄すれば干渉、干犯となることがあつても被上告人山谷彌一の如く法律に従つて行政行為を行わない場合に、裁判所からそれを命ずる判決を下す事は何等干渉でも干犯でもない。これを例えば行政機関の一つである食糧配給所が、その配給をしなかつたり行政機関の一つである県庁や地方事務所が当然支払うべき金員を支払わなかつたりすれば、これを訴求出来ると同じであろう。原審並に第一審は何が故に即ち如何なる法律上の理由があつて議会を招集しないかを調査することなく、単に上告人の主張を批判するのみにて上告人の請求を排斥したのは失当である。

而してある法律行為、議会の招集と云うが如く意思の陳述を求めることにつき、勝訴の判決を得たときは民事訴訟法第七三六条その他に基き、業務者に代つてこれを行う事が出来るのである。

これを要するに原判決は審理不尽理由不備の違法並に法律の解釈適用を誤り憲法に違背する嫌がある。違法があるから到底破毀を免かれないと信ずる。

第二点

原判決は其の理由中我国に於ては一般的な制度として職務執行命令が認められていないからと判示し、第一審裁判は裁判所が被告の不作為に対し行政的一般監督権を有しないからと云うことを判示するも上告人等は自己の権利の行使として本件訴求を為すものにして職務執行命令が認められていることを請求原因とするものでなく、且又裁判所に行政的一般監督権あることを理由とするものではないから、右各判示は何れも当らず破毀を免れないと信ずる。

以上

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